大きくしたい
The scale itself小さくまとまりたくない、という気持ちです。同じ一年を使うなら、届く範囲の広いものを作りたい。これは強欲とは違います。作るものの大きさを、自分で決めたいという話です。
この燃料は、量が多いぶん早く燃えます。だからこそ、燃え尽きる前に工程へ変換しておく必要があります。変換されなかった野心は、二週間で気分に戻ります。
Free article — 行動経済学 / B-12
夜の十一時に、あなたは一行だけ投稿します。「今月中に出す」。書いた瞬間は、本当にそう思っています。嘘ではありません。心臓の速さも、指の熱も、全部本物です。
そして三週間後、その投稿は静かに流れていきます。誰も催促しません。誰も責めません。ただ、あなただけが覚えていて、次に何かを宣言するときの声が、少しだけ小さくなります。壊れたのは計画ではありません。まだ計画になっていなかったものが、計画のような顔をしていただけです。
この記事は、大きなことを言うなという話ではありません。逆です。大きなことを言い続けられる人になるために、宣言と見積もりと約束を、三つに分けて置き直します。
二回の見積もりは2分ほど。最後まで読んで20分ほど。全文無料です。 この記事に入力欄はありません。答えの保存も、送信も、採点もしません。すぐ下の二回の見積もりも同じです。押したものはどこにも残らず、あなたの性格や傾向の判定にも使いません。

B-12 / THE WAR TABLE
架空の任務を一つ置きます。任務の中身は、二回とも同じです。変わるのは、二回目のときに机の上に載っているものだけ。 どれが正解かは言いません。正解のある問題として作っていません。
任務(架空・あなたの案件ではありません)
採点も、診断も、送信も、保存もしません。押した答えはこの画面を閉じると消えます。 これは仮の見積もりで、あなたが実際に抱えている案件について何かを決めるものではありません。
上の三行を、はじめから終わりまで通すのに何日かかりますか。
この表は最初から読めます。ただ、上の見積もり01を先に押したほうが、この記事が見せたいものが見えます。 押さずに読んでも、記事は最後まで成立します。
似た仕事の記録(この演習のための架空の数字)
この二つは、この演習のために作った架空の数字です。 このサイトの実績でも、誰かの成果でも、平均でも、目安でも、推奨でも、約束でもありません。
八工程と、上の二行を見たうえで、もう一度だけ日数を出してください。
二回とも答えると、ここが開きます。
どちらの数字も、正しいとも間違っているとも言いません。 正しい日数は、あなたの案件の中にしかなく、この画面からは見えません。 ここで見ているのは日数の当否ではなく、見積もりが何を材料にして作られているか、という一点です。
四つとも使える形です。今日から一つだけ持つとしたら、どれですか。
WAR CARD六行です。答えが揃っていなくても、形はここにあります
この一枚は、うまくいくことを約束しません。約束できるのは、 予定がずれたときに、何がずれたのかを自分で読める状態になる、というところまでです。
野心は大きくていい。見積もりだけは、冷たく作れ。この六行は、記事の最後にもう一度、書き込める形で出てきます。 いま何も決めなくてかまいません。
説明より先に、一つだけ
あの一行を書いたとき、あなたの頭の中には、たしかに映像がありました。完成した商品、届く反応、口座に入る最初の一件。映像はかなり具体的だったはずです。具体的すぎたくらいに。
ただ、その映像の中に、法的な表示を調べる二時間はありましたか。決済の設定が一度で通らなかった半日は。自分で最後まで買って、受け取れるかどうかを確かめる作業は。十人に別々の文面を書く夜は。おそらく、どれも映っていません。映っていたのは、完成した姿と、それが人の手に渡る瞬間だけです。
これは想像力が足りないという話ではありません。むしろ逆で、想像力が正しく働いた結果です。人が何かをやろうと決めるとき、頭の中に浮かぶのは「終わった状態」です。終わった状態には、途中の工程は含まれません。含まれていたら、たぶん決められません。
つまり、あの一行を書かせた力と、あの一行を守れなくさせた力は、同じものです。前に進むために必要だった省略が、そのまま日程の穴になった。ここを分けずに「自分は口だけだ」と結論すると、次に言葉を出すのが怖くなります。怖くなった人は、小さいことしか言わなくなります。それは、あなたにとっても、あなたの商品にとっても損です。
「大きなことを言うな」ではない。大きなことを言うなら、工程を小さく見ろ。
この記事がやることは、一つだけです。宣言の熱量はそのままにして、日数の作り方だけを別の場所に移す。熱いまま出すものと、冷たく作るものを分ける。それだけで、宣言が守られる確率の話ではなく、宣言が壊れたときに何が壊れたのかを自分で読める状態になります。
この記事は、あなたの締め切りが間違っているとは言いません。正しい日数は、あなたの案件の中にしかなく、この画面からは見えません。ここで扱うのは、日数の当否ではなく、日数の作り方です。
まず、動機のほうから
見積もりの話を始める前に、動機の話を済ませます。順番を逆にすると、この記事はただの「落ち着け」という文章になってしまうからです。落ち着けと言うために書いていません。
何かを売ろうとしている人の動機は、だいたい四つのどれかに触れています。四つとも、恥ずかしいものではありません。並べておきます。
小さくまとまりたくない、という気持ちです。同じ一年を使うなら、届く範囲の広いものを作りたい。これは強欲とは違います。作るものの大きさを、自分で決めたいという話です。
この燃料は、量が多いぶん早く燃えます。だからこそ、燃え尽きる前に工程へ変換しておく必要があります。変換されなかった野心は、二週間で気分に戻ります。
できると思われていなかった、あるいは自分でも半信半疑だった。それを一回、事実で置き換えたい。この動機は強く、そして扱いを間違えると日付を短くします。証明は早いほど気持ちがいいからです。
ただ、証明になるのは完成した物であって、宣言した日付ではありません。日付を守ったかどうかを見ている人は、あなたが思っているより少ない。見られているのは、出てきた物のほうです。
家族、相棒、まだ何も知らない誰か。自分ひとりのためなら降りられる場面で降りられないのは、この燃料が入っているときです。責任は重いほど、日程を甘くします。急がなければならない理由が、見積もりの中に混ざり込むからです。
守るためにこそ、日数は冷たく作る必要があります。外れた日程は、いちばん先に、守りたかった相手のところへ請求書として届きます。
悪い条件に「いいえ」と言える状態でいたい。これは、この棚の一つ前の記事が丸ごと扱っている動機です。ここでは繰り返しません。一つだけ言えるのは、自由を早く手に入れようとして日付を詰めると、詰めたぶんだけ悪い条件を受けやすくなる、ということです。
間に合わせるために単価を下げる。間に合わせるために点検を飛ばす。間に合わせるために、断るはずだった仕事を受ける。急ぎは、自由を削る側に働くことがあります。
四つとも、消す必要はありません。この記事は、燃料タンクには一切触りません。触るのは、その燃料をどこへ通すか、という配管だけです。
熱は入口に置く。冷たさは、日数の欄にだけ置く。
熱いまま日数を書くと、日数が宣言の一部になります。宣言の一部になった日数は、途中で書き換えられません。書き換えると、宣言そのものが取り消されたように感じるからです。そして人は、宣言を取り消すくらいなら、間に合わなかった事実のほうを黙ります。ここから先の全部が、この一点から始まります。
三つに分ける
「今月中に出す」という一行の中には、性質のまったく違う三つのものが同居しています。同居しているあいだは、どれか一つが壊れると三つとも壊れます。だから、先に分けます。
何をどこまでやるかという、方向と大きさの宣言です。日付は含みません。「自分の商品を、自分の名前で、人が金を払う形にして世に出す」までが野心です。
野心は、外れることがありません。方向だからです。外れるのは、いつまでにという部分がくっついた瞬間からです。
いまわかっている材料から出した、所要日数の見込みです。事実が増えたら書き換わります。書き換わることが、見積もりの正常な動作です。
見積もりは、あなたの能力の評価ではありません。工程の量と、確かめられていない場所の多さの関数です。ここを人格の話にすると、書き換えが自己否定になり、書き換えられなくなります。
相手がそれを前提に何かを決める、という状態のことです。相手が予定を空けた、他の買い物を見送った、支払いの準備をした。そこまで来たら約束です。
約束は、数を減らして、守れる形でだけ結ぶものです。守れる形とは、依存する工程が全部自分の側にあり、確かめ終わっている状態のことを言います。
ここで一つ、はっきりさせておきます。誰もあなたの投稿を予定表に書き写していません。「今月中に出す」を読んだ人は、三分後には別のものを読んでいます。あの一行は、まだ約束になっていない。だから、日付を動かしても、あなたは誰も裏切っていません。
では何が痛いのかというと、あなた自身の記録です。言ったことと起きたことの差が、自分の中にだけ溜まっていく。溜まると、次に言うときの声が小さくなる。だから対処すべき相手は、他人ではなく、この記録のほうです。そして記録を守る方法は、当てることではありません。ずれたときに、何がずれたのかを書けるようにしておくことです。
見積もりは、誓いではありません。
誓いは、破ると人格の問題になります。見積もりは、外れると材料の問題になります。同じ「間に合わなかった」でも、あとに残るものが違う。前者は自信を削り、後者は次の見積もりの精度を上げます。
そしてもう一つ。新しい事実がわかったときに日付を動かすのは、逃げではなく責任です。決済の設定に外部の相手が絡んでいて、返事が三日かかるとわかった。それは新しい事実です。事実を握りつぶして元の日付のまま走るほうが、はるかに無責任です。動かすときは、黙って動かすのではなく、何がわかったから動かすのかを一行添える。それだけで、日付の変更は撤退ではなく報告になります。
ここで書いているのは、仕事の進め方についての一つの考え方です。雇用契約や請負契約の上での納期、取引先との合意、法的な義務については、この記事は何も述べません。約束をどう扱うかは、その契約の側の話です。
上でやってもらったこと
この記事の上のほうに、架空の任務が一つ置いてあります。まだ触っていなければ、一度戻って二回とも答えてみてください。二分もかかりません。
任務は、二回ともまったく同じです。無料の記事を一本出す。有料の章を一つ、買えて渡せる状態にする。関係のありそうな十人に、一人ずつ自分で見せる。この三行は、一回目でも二回目でも一字も変えていません。
変えたのは、机の上に載っているものだけです。二回目には、八つの依存工程が並んでいます。読者の一文、無料記事、有料パッケージ、主張と証拠の点検、法的な表示、決済、受け渡しのテスト、十通の個別連絡。そして、似た仕事が何日かかったかという記録が二行。
この二回は、あなたを測るために作られたものではありません。測れるほど精度のある問いでもありません。あそこで見てほしかったのは、自分の日数がどこから出てきたのか、という一点だけです。完成した姿から逆算したのか、通る工程を数えたのか。
二回目のほうが長くなった人は、それを「自分は見通しが甘い」と読まないでください。動いたのは判断力ではなく、見えている作業の量です。同じ人が同じ頭で、材料だけ増えた状態でもう一度計算した。それだけのことです。二回の押し比べは、偏りの証明にも、性格の判定にもなりません。
二回目のほうが短くなった人もいるはずです。工程に分けたことで、思っていたより経路が短いとわかることは実際にあります。分解は、日数を伸ばすための道具ではありません。日数を見えるようにするための道具です。ただし、短くなったからといって、短いほうが正しいという証拠にはなりません。証拠になるのは、実際にやってみた記録だけです。
そして、二回とも同じだった人へ。その一致は、あなたが楽観の寄りを受けないことの証明にはなりません。もともと工程を数える癖のある人も、四択の粒度が粗くて動かなかった人も、同じ結果になります。二回で分かることは、ほとんどありません。
上の二行の記録は、この演習のために作った架空の数字です。このサイトの実績でも、誰かの成果でも、平均でも、目安でも、推奨でも、約束でもありません。あの二つの数字を、自分の案件の基準として持ち帰らないでください。
一本目の研究
ロジャー・ビューラー、デール・グリフィン、マイケル・ロスが一九九四年に出した論文があります。この記事が借りている一本目で、「計画錯誤」という言葉が広く使われるようになった出どころのひとつです。
報告されているのは、いくつかの場面で観察された一つの向きです。学業の課題についても、学業とは関係のない日常的な作業についても、本人が申告した完了予定は、実際にかかった時間より短いほうへ寄ることがあった。論文はこれを、一本の実験ではなく、設定を変えた複数の研究として示しています。
この論文で面白いのは、日数の当たり外れよりも、予測している最中の中身を見にいった部分です。予測しながら考えていることを声に出してもらうと、内容の多くはこれからの筋書きでした。どういう順番で進めて、どこで区切って、どう仕上げるか。一方で、自分が過去に似た作業をしたときに実際どうだったか、という話は多くありませんでした。
つまり、予測は「これからの物語」で作られていて、「これまでの記録」はあまり参加していなかった。そして、これからの物語は、たいてい滑らかです。物語の中では、決済の設定は一度で通り、法的な表示は調べれば十分で済み、十通の連絡は一晩で終わります。物語には、待ち時間が出てこないからです。
この論文の中には、もう一つ報告されていることがあります。関連する過去の経験を、いまの予測に明示的に結びつけて考えてもらった条件では、楽観の側への寄りが小さくなった、というものです。過去を思い出させるだけでは足りず、それを今回の予測に接続してもらうところまでやった条件、という書かれ方をしています。
この記事がこの論文から持ち帰るのは、ここまでです。倍率ではありません。「見積もりを二倍にしろ」とも「三倍にしろ」とも書けません。そういう数字は、この論文からは出てきませんし、あなたの案件にあてはまる保証もありません。
これは、限られた条件で行われた報告です。効果の大きさはこの記事では扱いません。あらゆる人が、あらゆる場面で、必ず短く見積もるという法則ではありません。あなたの見積もりが甘いという診断でもありません。診断は、この画面からはできません。
使えるのは、向きだけです。「自分の予定は、これからの筋書きのほうから作られやすい」という向き。向きがわかっていれば、対策は一つしかありません。筋書きの反対側にある材料を、意識して机に載せることです。それが、次の節の話です。
実務としての読み替え
ここから先は、研究の報告ではなく、このサイトの実務としての読み替えです。研究が示したのは向きだけで、次に書く手順は研究から導かれたものではありません。分けて読んでください。
日数の作り方には、二つの入口があります。一つは、いまの案件の中身を見て、頭の中で組み立てて出す方法。もう一つは、自分が過去にやった似た大きさの仕事が、実際に何日かかったかを見る方法。前者を内側からの見積もり、後者を似た仕事の記録から作る見積もりと呼んでおきます。
「記事は二日で書ける。パッケージは三日。表示まわりは半日。決済は一時間。連絡は一晩。だから一週間。」
強いのは、この案件固有の事情を全部拾えることです。今回だけ短くなる理由も、今回だけ長くなる理由も、この方法でしか入りません。
弱いのは、待ち時間と、まだ知らない工程が入らないことです。頭の中には、自分の作業しか出てきません。外の相手の返事も、通らなかったときのやり直しも、物語には登場しません。
「前に自分でやった同じくらいの立ち上げは、実際には何日だったか。二回ぶんくらい思い出す。」
強いのは、待ち時間もやり直しも、全部すでに含まれていることです。実際にかかった日数には、忘れていた工程が最初から入っています。
弱いのは、今回だけの事情がまったく入らないことです。前より慣れているかもしれないし、前より面倒な要素があるかもしれない。記録は、それを知りません。
どちらか一方が正しい、という話ではありません。片方だけで作った日数が危ないだけです。内側からだけで作ると待ち時間が消え、記録からだけで作ると今回の事情が消えます。
初めての立ち上げなら、似た仕事の記録は手元にありません。それが普通です。そのときに、他人の数字を借りてくるのはやめてください。誰かの「二週間でできました」は、その人の工程と、その人の環境と、その人がすでに持っていたものの上に乗った数字です。あなたの記録にはなりません。
記録がないときにできることは、二つあります。一つは、いちばん近い経験を代わりに使うこと。商品を作ったことがなくても、締め切りのある文章を書いたことはあるかもしれません。その一本にかかった日数は、あなたの記録です。もう一つは、「記録なし」と書いておくこと。記録なしと書かれた見積もりは、記録つきの見積もりより幅を広く扱う。それだけで、外れたときの落差が変わります。
八つに分ける作業の目的は、日数を長くすることではありません。数えられる形にすることです。数えられる形になると、三つのことができるようになります。
日付は、いちばん遅い工程が決める。いちばん速い工程ではない。
自分が得意な工程は速く終わります。文章が得意なら記事は早い。だから、そこを基準に全体を見積もってしまう。ところが実際に日付を決めているのは、いちばん苦手で、いちばん外の相手が絡んでいて、いちばんまだ触っていない工程です。八つに分ける価値は、そこが名前を持つことにあります。
そして、余白の話をしておきます。見積もりの外側に何日足すか、という欄です。この記事は、その日数を書きません。書けないからです。何日が妥当かは、あなたの案件と、外れたときに何が起きるかによって変わります。二日でいい場面もあれば、二週間必要な場面もある。決めるのはあなたで、この画面ではありません。ただ一つだけ言えるのは、余白を見積もりの中に溶かし込まないことです。溶かすと、余白があること自体を忘れます。
売り手としての線引き
ここまで読んで、危ないことに気づいた人がいるはずです。公開した日付は、そのまま売るための道具に使えてしまいます。だから、しないと決めていることを先に書きます。
起きやすい流れは、こうです。日付を宣言する。間に合わない。取り消したくない。そこで、日付のほうを売り文句に変える。「この日までに買った人だけ」「この日を過ぎたら値上げします」。実際には、値上げする予定も、締め切る理由もない。自分の遅れを、買い手を急がせる材料に変換しているだけです。
これは道徳の話であると同時に、実務の話でもあります。急がせて買わせた人は、買ったあとに「なぜ急いだのだろう」と考えます。そこから返金の相談や、静かな失望が生まれます。そして、急がせて動いた数字からは、商品のどこが良かったのかが読み取れません。計器を汚すという意味でも、偽の締め切りは損です。
遅れは、こちらの事実です。相手の緊急ではありません。
表示や広告に何を書けるか、何を書くと問題になるかは、この記事が判断できる範囲の外です。この節に書いてあるのは、このサイトが自分に課している線であって、法律の解説でも、法的な助言でもありません。
二本目の研究
ペーター・ゴルヴィツァーが一九九九年に出した論説があります。この記事が借りている二本目で、実行意図と呼ばれる計画の形について、それまでの研究群を著者自身が整理したものです。
そこで説明されているのは、目標そのものではなく、目標を実行に移すときの書き方です。「痩せる」「記事を書く」といった目標の言明とは別に、「こういう状況になったら、そのときこう動く」という形で、予期した場面と、そこでとる具体的な行動を、あらかじめ結びつけておく。この結びつきのことを実行意図と呼んでいます。
普通の目標は、いつやるかを本人がその場で決めます。決める作業には力が要ります。疲れている日、気分が悪い日、他に用がある日には、その力が足りません。実行意図は、その決める作業を前倒しにして、場面のほうに預けておく形です。場面が来たら、決めるのではなく、決めてあったことを実行する。
この記事が持ち帰るのは、この形の説明までです。それ以上は書けません。念のため、書けないことを並べておきます。
この記事が実務として使うのは、形の部分だけです。目標を「がんばる」で終わらせず、場面と行動の対にする。そして対にするときに、場面のほうを先に、行動のほうをあとに置く。この順番には理由があります。行動から書くと、「毎日やる」のような、場面のない願望になりやすいからです。
「今月中に出す。毎日進める。集中する。」
いつ、何が起きたら、何をするのかが書かれていません。だから、実行するたびに毎回その場で決めることになります。
そして、うまくいかなかったときに何を直せばいいのかもわかりません。直す対象が「集中」しかないからです。
「もし決済のテストが通らなかったら、そのとき、日付の告知をやめて、その経路を先に直す。」
場面が具体的で、そのとき何をするかが一つに決まっています。判断は、場面が来る前に済んでいます。
うまくいかなかったときも、直す場所がわかります。場面の書き方が粗かったのか、行動が大きすぎたのか、どちらかです。
これは実行を保証する書き方ではありません。決める回数を減らす書き方です。減らせるかどうかも、場面によります。
上の実験の最後にある四つの一行は、この形で書いてあります。どれか一つを持ち帰るなら、いま自分が止まりやすい場面に対応するものを選んでください。四つとも良い一行ですが、四つ持つと、また選ぶ作業が戻ってきます。
具体例
ここからは、売っているものが違う四人が、同じ考え方をどう使うかを書きます。共通しているのは一つだけです。いちばん遅い工程と、まだ一度も通していない経路を、先に名指しすること。
文章は速い。だから内側からの見積もりは、いつも書く時間を基準に作られます。ところが実際に日付を決めているのは、たいてい書く工程ではありません。買える状態にする工程と、渡せる状態にする工程です。決済の設定、表示の整備、そして自分で最後まで買って受け取ってみるテスト。ここが二日で済む保証はどこにもありません。
この人が最初に置くべき一行は、告知の順番についてのものです。買える状態を先に作り、渡せることを自分で確かめ、それから日付を出す。逆順にした瞬間、日付は自分の見込みではなく、他人への約束に変わります。
この現場の日数は、ほとんど自分の外にあります。生地の手配、印刷の工程、サンプルの往復、直しがあればもう一往復。自分がどれだけ夜更かししても、この部分は縮みません。内側からの見積もりが最も外れやすい形です。
だから、この人の作業表では、外の相手が絡む工程を全部いちばん上に持ち上げます。そして、まだ現物を見ていない状態で発売日を告知しないと決めておく。現物を見る前の日付は、確かめていない工程の上に立っています。サンプルが一度で通る前提の日程は、前提のほうが強すぎます。
ここでの見積もりは、自分のためのものではなく、相手に出す数字です。つまり、宣言ではなく最初から約束の側にあります。だから、他の三つの現場より慎重に作る必要があります。
この人が見落としやすいのは、作業時間ではなく往復の時間です。確認の返事を待つ時間、修正の指示が来るまでの時間、こちらが質問してから答えが来るまでの時間。作業だけを合計した日数は、ほぼ確実に短くなります。そして、往復の回数は相手の都合で決まるので、こちらの努力では縮みません。ここを見積もりに入れておくと、遅れの原因を相手のせいにしなくて済みます。
この現場には、他の三つにない工程が一つあります。買ってから受け取るまでの経路が、全部自分の責任範囲にあるということです。決済が通ったのに受け取れない、という状態は起こりえます。そしてそれは、買った人にとっては商品が届かないのと同じです。
だから、この人の作業表では、受け渡しのテストが最後ではなく、告知より前に来ます。自分で一度買って、自分で一度受け取る。ここを通していない状態の完成は、完成ではありません。この一点だけは、日程の都合で後ろに送ってはいけない工程です。
四つとも、共通しているのは同じ一点です。速くできる工程を基準に日付を作ると、遅い工程がそのまま遅れになります。見積もりを作るときに見るべきは、得意な場所ではなく、外の相手が絡む場所と、まだ一度も通していない場所です。
手を動かす
紙かメモアプリを開いてください。六行です。ここに入力欄はありません。書いたものは、どこにも送られません。いま進めている案件を一つだけ選んで、それについて書きます。
この六行で、二つのものが手に入ります。一つは、いま抱えているものの本当の長さです。多くの場合、それは思っていたより長い。ただ、長いとわかった時点で、それは失敗ではなくなります。長さがわかっているものは、削るか、分けるか、遅らせるかを選べるからです。
もう一つは、日付がずれたときに読める記録です。05を先に書いておくと、次に止まったときに、その場で判断しなくてよくなります。判断はすでに済んでいて、あとは場面に当てはめるだけになるからです。
そして、03が「記録なし」だった人へ。それは、見積もりを出してはいけないという意味ではありません。今回の日数が、そのまま次回の記録になるという意味です。だから、終わったときに実際の日数を書き留めてください。二回ぶん溜まると、あなたの見積もりは他人の数字を必要としなくなります。
この作業をやっても、間に合うようになるとは書けません。書けるのは、間に合わなかったときに、何が原因だったのかを自分の字で読める状態になる、というところまでです。
この記事が言っていないこと
上で引いた二本は、限られた条件で書かれた報告と論説です。この記事が主張していないことを、並べておきます。
いちばん大事な限界を書いておきます。この考え方は、売れない理由の説明にはなりません。日程を正しく作っても、誰の何を変えるものかが決まっていなければ、出したあとで何も起きません。この記事にできるのは、出すところまでの経路を読める形にするところまでです。
そして、ここで引いた二本の研究は、このサイトで売っているものの値打ちを支えません。研究は研究で、商品は商品です。混ぜて読むと、どちらも正しく判断できなくなります。
研究の出発点
一次文献は二本だけです。どちらも、あなたの日程が間違っていると示した研究ではありません。何がどういう設定で報告されたのかと、そこから言える範囲は、それぞれの説明に書いてあります。リンク先は英語で、一部は有料の場合があります。
Buehler, R., Griffin, D. & Ross, M. (1994)
Exploring the planning fallacy: Why people underestimate their task completion times
Journal of Personality and Social Psychology(DOI)
学業の課題と、学業以外の日常的な作業の両方を含むいくつかの場面で、本人が申告した完了予定が楽観に寄ることがあった、と報告した一連の研究です。予測中に声に出して考えてもらうと、これからの筋書きの話が多く、過去の似た経験の話が少なかったこと、そして関連する過去の経験を現在の予測に結びつけて考えてもらった条件では楽観の寄りが小さくなったことも報告されています。この記事は「そういう向きが報告されている」までを借ります。倍率も、あらゆる人にあてはまる法則も、読者の診断も、ここからは出てきません。
Gollwitzer, P. M. (1999)
Implementation intentions: Strong effects of simple plans
American Psychologist(DOI)
「こういう状況になったら、そのときこう動く」という形で、予期した場面と具体的な行動をあらかじめ結びつけておく計画の形について、著者自身が研究群を整理した論説です。この記事は、その形の説明としてだけ引きます。成功率も、効果の大きさも、自動的にうまくいくという意味も、収入や生産性への影響も、あらゆる場面にあてはまるという意味も、ここからは書けません。
私はこれらを、傾向の向きと、計画の形として引いています。「こういう条件で、こういうことが報告されている」までが、この記事の主張です。効果の大きさは書きません。倍率も成功率も書きません。あなたの見積もりの診断としても使いません。そして、ここで売っている第1章が4,980円に見合うことの証明としても、一切使いません。研究は、商品の値打ちを保証しません。
この記事は、ここで終わりです
六行のうち、01で止まった人がいるはずです。終わりの形が一行で書けない。これは日程の問題ではなく、その手前の問題です。誰の何を変えるものなのかが決まっていないと、何がどうなったら終わりなのかも決まりません。決まっていない任務には、正しい日数が存在しません。
有料の第1章『ポジティブを商品にする』は、あなた自身の経験を「誰に、何を、いくらで、どこで届けるか」の9項目に落として、一枚の商品設計書にする実践章です。9項目が埋まると、この記事でいう01の欄が、はじめて一行で書ける状態になります。終わりの形が決まってから日数を作るほうが、順番として素直です。
本編PDF62ページ、書き込み用のワークブックPDF27ページ、同じワークブックのDOCXの3点で、4,980円。2〜3時間かけて書く章です。読むだけだと、成果物は手に入りません。
ワークブックの06に最小の商品を決める欄があります。任務を小さくするというのは、この記事でいえば、通る工程の数を減らすということです。11には最初の市場テストの記録欄があり、12は次に確かめることを決める欄です。この記事の六行を先に書いてから章を読むほうが、たぶん進みます。
この記事で引いた二本の研究は、第1章が4,980円に見合うことを証明しません。研究が示したのは、完了予定が楽観の側へ寄ることがあるという向きと、場面と行動を対にしておく計画の形の説明だけです。値打ちがあるかどうかは、中身を見てあなたが決めることです。そして、いまは買わないという判断も、この記事でいえば正しい見積もりの一種です。
先に、向いていない人を書きます。次のどれかに当てはまるなら、買わないほうがいいです。
ここまでが、無料で読める12本目です。12本とも、登録も購入もなしで最後まで読めます。読んだだけで足りたなら、それがいちばん良い結果です。